凡人数学徒の徒然

私の身の回りに起きたこと、数学の話題などをポロポロと

あっという間に。

新しい大学に着任してあっという間に半年が過ぎた。仕事がありすぎることもないので研究も、それなりに進ませる事ができつつ過ごしてる。今とても充実していて、なんか数学者として少しずつではあるが、自己を確立しつつある気がする。これを続けていく人生なんだと何となく思えるようになって来ている。博士課程では論文を書き続ける事ができるか不安で仕方ないという感じだったが、今はこういう仕事をしたいという気持ちに変わって来ていて、論文はそのための手段でしかなくなって来ている。

 

少し歳をとったなと感じる。後輩との距離が少し遠く感じるようになった。たぶん教員として多くのものを知ったからだと思う。考え方は少なからず影響を受けている。けどそれは決して悪い事ではなく、数学で無難を求めるのではなく更に先までやってこそ意味があるというところまで求めて数学をしている。結果が欲しい学生から、良い結果が欲しい若手にステップアップした感じである。何かこの数学という世界で貢献できる事が自分にできると良いなと思う日々である。

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お久しぶりです。学位論文発表会を終え、結果を待つばかりの人です。安心は出来ないものの、何も言われていないです。ここ最近は研究者としての就活、論文まとめであくせくしてる日々でした。抱えている論文が三本ありとにかくそれをアーカイブに出すのに苦労してます。一つはもう出せたのであと二つです…

さて、こんなブログの作者の心配などしてる人は居ないと思うのですが、無事来年からとある大学の助教として採用される事になりました。任期は4年。まだまだ安定はしていないのですが、着実に進んでいる気がします。一回り上の学年の方がパーマネントにつきつつあるので、私も数年しっかり土台を作りまた就活をしようと思ってます。今年度はかなり疲弊したので、もっと余裕を作りたいです。

 

私の博士課程も残りわずか、論文をまとめて次の町へと行きたいです。

久しぶり②

このブログは気分で書くものだと思っている。時々来てみては、見てる人もいるなという感じである。

最近は忙しすぎる。とにかく公募やら授業やら書類の準備やらで師にもなっていないのに、師走状態である。師走でもない。

 

最近よく考えるのは、研究の方向性である。

ここまで勢いでやれる事をやってきた。論文は書こうと思えば書けるといった感じになってきたが、この論文に意味があるのか?という問いが常に頭の中を回るようになった。

博士3年になり、研究者が求められる研究の質といったものが少しずつ見えて来た。修士の頃は何か新しい事を示せばそれなりに認められていたのが、この年になると何か意味があるのか?という同業者の眼差しを感じる。それは学問を推し進める事が出来ているのか?という問いでもある。これに関して、僕は少なくとも数学を推し進められたという自信は無い。とにかく自分ができる非自明で面白そうな事をやって来たまでである。

この問は今後の研究者として大きな分岐点に立っているとも言える。ここで自分の世界を深めていくか、それとも王道のこれは意味がある!と誰でも言うような事をやるのか、はたまたどちらもやるのか。

この問いに答えてくれる人はいない。けど研究者として生きていくのなら、何か意味のあるもの、これは絶対に価値があると言えるものを作り出したい。それには勉強するしか無いのだ。日々勉強しながら何か大きな事を追い求め、手探りの日々である。

D3

D3になりました。とても自分がD3だとは思えないのですけど、普通にD3になっちゃいましたね。修士の時博士課程の人なんてやばい人なんだろうなと思ってたのに自分がその立場になって思うのは、ちゃんとやればどうにかなるし、案外修士と変わらんという事でした。数学というものが不変であるというのがたぶん大きいんだと思います。しなきゃいけないこととか、やる事が変わらないので何も変わってない気がします。積み上げてきたものは年につれて積み上がっていくものなので、そこは本質ではなかったです。結局本質は数学が出来るか(色んな意味で)でした。

 

とりあえず論文は4本今のところあり、卒業も視野に入っているのでそこは問題ないのですが、来年以降の研究生活をどうするかです。今のところ学振や、理研その他公募に出す予定で、アカデミアに残るつもりです。教員免許を持っているので、やれるところまで突っ走る事が出来るのでそのつもりです。研究者目指したい人は教員免許取っとくと良いと本当に思います。食えないということが絶対に起きません。

 

今年は対面で色々行われる事を予想してますが、なかなか判断しかねている感じではあり、博士課程の3年間はオンラインでのつながりがほとんどになる感じがします。ですが、今思うとその分時間はあって数学と向き合う時間は増えたように感じます。最後の一年もより数学に向き合えたらなと思います。

2021年。そして2022へ。

2021年は日常を取り戻していく一年でした。コロナ禍だった2020年、ワクチンの開発は急速に行われ、実際に2021年初頭にはイスラエルをはじめ、多くの国で打たれ始めました。日本では2月から医療従事者をはじめ、高齢者を優先して打たれ始めました。9月には摂取率が50%を超え、日本のワクチン接種は急速に進みました。それと同時に、8月に5000人以上を記録した東京の新規感染者はみるみるその数を減らし、9月から10月のうちに二桁まで落ちました。mRNAワクチンの効果を如実に表していると思います。

一方、ワクチンがあまり進んでいない国があります。それはmRNAワクチンを作ったアメリカです。アメリカでの接種率は日本を大きく下回ります。感染者の増加も抑えられていません。背景は色々ありますが、一つにデマ情報によるワクチン忌避です。この様なデマによって人の命は蔑ろにされ、一方で私服を肥やす人間がいるのです。許せません。なぜそんなことをするのかと思うところには必ず金の動きがあるというのがこの一年で学んだこの世の理の一つです。厄介なのは純粋な人は何も悪くないが、周りを巻き込んでしまうので、非常に悪質です。

私自身は運良く9月までに2回目も終わり、そこからほぼ通常を取り戻したと思います。遊びに行くとかは無いですが、数学ができれば問題無し。

 

こうして過ぎた一年の間も、成長出来たものがあります。それは4次元の世界を見る能力です。特にカービー図式を使って研究が出来ました。振り返るとちゃんと成長しているなと感じます。ですがまだまだお子ちゃまであり、スポンジだと思ってます。なので、もっともっと吸収出来るものはして、次に繋げていきたいです。

 

2022年の目標は更なる成長と、貪欲に成果を求めることです。成果をたくさん出すことを博士課程最後の年に目標にしたいと思います。これまでの倍の成果を出していければいいなと思います。あと、就職というか食い扶持探しをうまくしていかなければいけませんね。。。あとは良い奥さんを笑

D2になる三次元多様体が専門の学生が読んできた本達紹介。

描こうと思った経緯

最近少々自分と違う分野を勉強しようと思って、いろんな参考書を読んだりしているのだが、専門が違うと同じことを書いていてもその書き方や本の最終目標が変わってくることがあるのが分かってきた。これはたまに、あるものを学びたいが、その本はその専門家では無い人が書いているので遠回りが起きてしまうという事態を呼ぶ。 こんな時、どの本を読めばその分野の最先端へつながっているのかを知れた方が良いと思った。遠回りすることで得られる経験は大きいものがあるが、今回はそこに目を瞑ろうと思う。あくまで、三次元多様体を研究するために読んだ本をまとめる。そして、その中でもこれを読めばある程度その分野の研究手法がわかるだろうというもの書く。

 

学部編

学部で学ぶトポロジーの主な内容は多様体論に始まり、ホモロジー理論、微分形式の理論でだいたい終わりだと思う。ホモロジーは単体、特異ホモロジーを使いその同相普遍性を示しマイヤービエトリスを使えることを目指す。微分形式はde Rhamの定理だろう。しかし、ここでは三次元多様体を研究する上で私が学部で学んだことを書く。はじめに多様体論の教科書をあげよう。

多様体

  1. 多様体の基礎」松本幸夫
  2. 多様体入門」松島与三
  3. 「四次元のトポロジー」松本幸夫

上の2つで決まりだろう。とくに1で十分であると思う。ここでの目標は陰関数定理を使えるようになること。別にリー群やリー環は知る必要はない。3に関しては多様体の感覚を得るために用いるといいだろう。さらに三次元多様体を学ぶ上で必要となるのがPLトポロジーである。PLとはpiecewise linear の略であり、区分線型であるということである。組み合わせ位相幾何とも呼ばれる。PLトポロジーを学べる教科書で新しいものが少なくなってきていることに危惧を覚える。以下PLトポロジーを学んだ教科書をあげる。

  1. トポロジー 加藤十吉
  2. 組み合わせ位相幾何学 加藤十吉
  3. トポロジー 田村一郎

上の3つをあげる。特に2つ目は網羅的な教科書であるこれを全て読めれば十分であるがそこまでする必要はないように感じる。また、1は残念ながら絶版らしい。これはなかなかいい本だったように感じる。3はホモロジーの教科書が大体参照している本である。単体複体からそのホモロジーポアンカレ双対までを書いてある。ホモロジーの教科書としてもお勧めできる。

ホモロジー理論

ホモロジーは最初にぶち当たる壁だが、まず群を知らなければいけない。これを侮るといけない。少なくとも群論準同型定理を理解して使えるくらいでなければならない。また、アーベル群の基本定理も知っている必要があるだろう。それらを網羅しているのが上述の田村先生のトポロジーであるが、それらを知っていると仮定して読むといい本をあげる。

  1. 代数的トポロジー 枡田幹也
  2. ホモロジー入門 坪井俊
  3. 位相幾何学 服部明夫

以上で十分だろう。3を読むとわかるが、この本を読めば全てを知ることができる。これを辞書のように使い、枡田先生の本で勉強するのが良いだろう。例や問題をときたいときに2を見るといいだろう。あと問題は東工大の院試や東大の院試が一通りできれば良いだろうと思う。ここで単体複体などの組み合わせ構造の勉強をしていると役に立つ。

 

微分形式に理論は三次元多様体論にはあまり持ち込まれない。しかし最近は接触構造などの研究がされていることを鑑みると少し触れておく必要があるだろう。こういうものは教養であり、大体のトポロジーの研究者は知っているものだと思う。いざという時の引き出しを持っていることが大事である。

微分形式

  1. 微分形式の幾何学 森田茂之
  2. 微分形式 坪井 俊
  3. 微分形式と代数トポロジー

上の2つは基本的なところから始めて、de Rham の定理まで勉強することができる。1はベクトル束の曲率や特性類まで扱っている良書ですが非常に行間が広く読みにくい。それに比べて、2は詳しく書いてある。2を読みながら1を読むのがいいかもしれない。先ほど述べた接触構造などの研究をする上では、微分形式の定義、de Rhamコホモロジー微分形式の積分などまで勉強するといいと思う。できれば、特性類も勉強するといいかもしれないが、これは院生になってからでも遅くはない。

 

大学院編

ここからは三次元多様体論に特化したものになるのでそれぞれについて述べていく。

 

「三次元多様体入門」森本勘治

私自身はこれさえ読めば論文が読めるようになると思う。この後に適当にHeegaard 分解やそこら辺の論文を検索して読むといいかもしれない。内容は、まず最初に基本的な定理を述べるところから始まる。ここら辺は組み合わせ位相幾何学の定理などを羅列している。証明を覚える必要はないが、知りたければ先ほどのべた教科書に全てのっている。安心して進むと、すぐにHeegaard分解についての解説が始まる。その上で圧縮不可能曲面などの三次元多様体内での切りはり技法を身に付けることができる。ここで注意したいのはHeegaard分解の解説が始まったあたりからの証明は全て読むことをお勧めする。また、命題もできれば覚えておいた方が良いだろう。参照できるくらいには覚えておくべきだろう。証明を読むことで三次元多様体をいじる方法を知ることができる。また何より、この本は、後半になるにつれて面白くなる。

 

「Lecture on Three-manifold Topology」Jaco

Seifert多様体に関する記述が上の本より詳しいのが嬉しいところである。英語であるが、院生ならこれくらいは読めなくてはいけない。また、実際に研究を始めたときにここにのっていることを覚えていると役に立つことがある。研究に詰まったときにとりあえず見てみると案外のっている時がある。

 

「3-manifold」 Hempel

上と同じで、研究しているときに参照することが多い。基本群の記述などが多くのっているが、のっていることは上の2つとさほど変わらない。しかし、三次元多様体の教科書として挙げられる代表的な本である。

 

大体上の本を読むことで論文を読むことができるようになる。しかし、これだけでは不十分だと感じる。なぜなら、近年は結び目理論と合わせて三次元多様体を考えることが多い。このため、Dehn手術や結び目の分岐被覆などの議論を知っている必要がある。ここら辺の結果などを学ぶためにちょうど良いのが以下の本達である。

 

「結び目理論」 河内明夫

日本語で三次元多様体と結び目を絡めて書いている数少ない本である。洋書では以下が非常に良い。

 

「Knots and links」 Rolfsen

大体これを見れば三次元多様体と結び目を知ることができる。結び目の分岐被覆などや、結び目の不変量、Dehn手術などのっている。

 

以上の本を読めば大体論文を読めるようになる。それで読めない時は自分で参考文献を探し読むの繰り返しである。

 

超久しぶり

超久しぶりに更新する。

元気でした。ただひたすらに日々に追われていた気がします。それはある意味充実していたということでもあるのですが、去年は総じて数日しか大学には行ってないです。

 

人間の対応力というのは凄いなと思った一年でもありました。オンライン化がどんどん進められ、家にいるのに研究集会やゼミに参加できる。最初は慣れないオンラインで、集中出来ないし、話もじっくりできないと感じていました。しかし時が経つにつれ、そう感じることは少なくなりました。これは一方で諦めのようなものだったと思います。今出来ないことはどれだけ望んでも出来ないのだから、今できることをやろうと思うようになったのがターニングポイントだったと思います。

 

6月あたりから論文をまとめることを今年の目標に定め、論文に厚みを持たすためプラスαの研究をしました。うまく事が運び、年末にはプレプリントをアップする事ができ、現在投稿中です。早めに切り替えられて本当に良かったなと思います。

 

研究は今もそこそこうまく進み、もう一本プレプリントを準備しています。その後もまた一つ書けそうな予感もしていて、数珠繋ぎに研究ができてるなと感じています。ただアクセプトされなければ意味がないので早くアクセプトが欲しいなとも思います。

 

不幸な事続きだった去年から今年は幸先が良さそうな気としています。数学の方ではうまくいっています。プライベートは全くうまくいってませんが。

 

今年もずっとオンラインでのやりとりが続くことを覚悟しながらも、仲間と会えることを願わずにはいられない日々を過ごしています。