結び目の不変量
結び目の不変量にはいろんなものがあります.
交点数,結び目解消数,トンネル数,彩色数,などなど.
交点数のようなものはかなり前から考えられていたもの(classical invariantなど書かれている文献もあります)で,なんとなく思いつきそうなものではあります.
ここで1つ位相不変量の話をしましょう.
位相不変量は簡単なものでコンパクト性や連結性などがあり,発展させると基本群,ホモロジー群などがあります.
不変量と一口に言ってもいろいろなものを対象にします.例えば,基本群なら群に値をとる不変量です.そういう意味で不変量を作るとは調べたいものの集合からある集合への写像を作ることに対応します.
結び目の話に戻りましょう.私たちの知りたい集合は結び目のアイソトピーによる同値類全体の集合です.
よく結び目の不変量で出てくるものに多項式不変量というものがあります.
つまり,結び目の集合から多項式環への写像を考えることができるのです.
その写像の作りかたは色々あるのですが,スケイン関係式というものが一番馴染みやすいかと思います.
はてなブログに不慣れなので定義がかけなくて残念なのですが,スケイン関係式は計算をする上で非常に有用です.大体の多項式不変量はスケイン関係式によって定義することができます.
以下はwikiのリンクです.
スケイン関係式では計算がしやすいといいましたが,三葉結び目,八の字結び目くらいならまだしも交点数が増えるにつれて計算するのも大変だというのが計算をしてみるとわかるかと思います.
主な多項式不変量はAlexander多項式,Jones多項式になるかと思います.これらに関して少し勉強すると結び目ってどういう風に研究してるんだろうというのがなんとなくですが,わかってくるかと思います.
アドバンスドな内容
最近の流行り?で多項式不変量の圏論化(categorification)というものがあります.
これは JonesではKhovanov homology
AlexanderではHeegaard Floer homologyというものです.
僕自身どちらも少し勉強してみたのですがまず計算が難しいのでかなり親しむにはそれなりの数学力が必要になります.ですがチャレンジすればかなりいい研究ができるかもしれません.
Khovanov homologyが定義された論文(arXivですいません.出版はもちろんされています)
https://arxiv.org/abs/math/9908171
あとは大槻先生が書いている結び目の不変量という本にもKhovanov homologyの計算例などが載っていますので是非.(理解できたのなら教えて欲しい)
なぜここまでHeegaard Floer homologyの方に触れなかったって?次の論文を読んでみてください.
https://annals.math.princeton.edu/2004/159-3/p03
有名なAnnals of mathの論文です.
まず,解析的な部分が全くわからん.これは3次元多様体バージョンでのHeegaard Floer homologyの論文です.Knot Floerはまだ計算手法など開発されていて手が届くかもしれないです.トポロジスト(少なくとも僕)にとっては難しい.
僕の記事はかなり研究の紹介に特化していますが,勉強は読者にほとんど委ねようかな..笑